陶磁器デザイナー・森正洋。森先生との思い出のつづる寄稿(岩田助芳)

私と森先生との出会いは2001年5月、白山陶器にお邪魔したときでした。無理やり松尾社長にお願いし、ご自宅に連れて頂き念願が叶った訳です。

眼鏡の奥から覗く柔和な瞳からは、現代のデザイナー界の重鎮という、雲の上の存在的な恐れ多くもという感じではなく、「遠方から訪ねて来た甥っ子を優しく迎えて頂いた」その様に感じました。そして何よりも感動したのは、ご自宅のアトリエに展示されている先生のデザインされた数々の製品でした。「白山陶器」「デザインモリコネクション」のカタログには掲載されていない往年の名作が整然と展示されており、それは正に「新鮮な宝の山」に遭遇した気分でした。有頂天になっていた私の様子を見ていた先生は、ご自分の作品集にサインをして下さり、モノづくりについてわかりやすく語って下さいました。

デザインは失敗の積み重ね、ひらめきではなく、いかに自分のものにするかが大切だ

この言葉はモノづくりに携わる人は勿論、全てに通ずる名言だと思います。またこんなことを熱く語っておられたことも思い出します。

食器をデザインするときは使用目的を限定しないほうが良い。なぜならば使い方で使う人の個性を活かすことが出来るから」と。

お聞きした当時はこの言葉にあまりピンときませんでしたが、マルチな使い方を常に心がけていた先生の遺作が「無印良品の白磁シリーズ」の大ヒットに繋がったことは、今更申し上げるまでもありません。先々を見据えてモノをデザインしいた先生の偉大さにただただ感服です。

常に「絵になるとはモノを通じて生活イメージが出てくること」とおっしゃていた森先生。ご自宅のアトリエの作品はきっと50年先、100年先の生活イメージを描かれてデザインされたものだろうと信じています。

(神奈川県藤沢市・湘南洋食器社長)